株式投資をしていると必ず目にする方程式、「株価 = PER × EPS」。
「言葉としては知っているけれど、具体的にどう株式投資や日経平均株価の予測に活かせばいいのかわからない」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
実は、この非常にシンプルな計算式を紐解くだけで、日経平均株価が今後どのようなシナリオで上昇・下落するのか、その本質的な構造が見えてきます。
本記事では、PERとEPSの基本概念から丁寧におさらいし、「①まず企業業績からEPSを計算・算出する」「②そのうえで市場の期待値であるPERの推移を予測する」という実践的なアプローチで、今後の日経平均株価の見通しを徹底的に解説します。
特に、インフレ局面における「名目上のEPS上昇」と、それに伴う「PER(株式評価倍率)の伸び代」に焦点を当て、実戦で使える分析手法をお届けします。
1. 株式投資の基本:「株価 = PER × EPS」とは?

株価の動きを分析する際、多くの投資家がチャート(テクニカル分析)に目を行きがちです。しかし、理論上、株価の適正水準を決める根本的な要素はファンダメンタルズ(業績と市場の評価)にあります。
それを一目で表したのが、以下の基本方程式です。
【株価形成の絶対方程式】
株価 = PER(株価収益率) × EPS(1株あたり当期純利益)
この式が意味しているのは、「株式の価格(株価)は、『企業が実際に稼ぐ力(EPS)』と『投資家がその稼ぎに対して支払ってもよいと考える倍率(PER)』の掛け算で決まる」ということです。
日経平均株価のような株価指数も例外ではありません。日経平均株価もまた、「構成銘柄の総EPS」と「全体の平均PER」の掛け算によって計算・形成されています。
2. EPS(1株あたり当期純利益)とは?計算方法と基本
EPSの定義と計算式
EPS(Earnings Per Share)とは、日本語で「1株あたり当期純利益」と呼ばれます。企業が1年間の事業活動を通じて生み出した最終的な純利益を、発行済株式数で割ることで算出されます。
【EPSの計算式】
EPS = 当期純利益 ÷ 発行済株式数
例えば、ある企業が1年間に100億円の純利益を上げ、発行済株式数が1億株であった場合、その企業のEPSは「100円」となります。
なぜEPSが重要なのか?
EPSは、企業の「純粋な稼ぐ力の規模」を1株単位で測定するための標準化された指標です。企業規模が全く異なる2つの会社を比較する場合でも、EPSを見ることで1株あたりの収益力を公平に比較できます。
また、EPSは計算式から明らかな通り、数値として客観的かつ具体的に算出(試算)することが可能という極めて重要な特徴を持っています。企業の決算発表や業績予想をベースにすれば、「今年のEPSはいくらになるか」「来期はどの程度成長するか」を定量的に計算できるのです。
3. PER(株価収益率)とは?市場の期待感を表す指標
PERの定義と計算式
PER(Price Earnings Ratio)とは、日本語で「株価収益率」と呼ばれます。現在の株価が、企業の「1株あたり純利益(EPS)」の何倍まで買われているかを示す指標です。
【PERの計算式】
PER = 株価 ÷ EPS
(または 株価 = PER × EPS)
PERの本質:市場の「期待値」と「金利水準」
計算上は「株価÷EPS」で求まるPERですが、本質的には「投資家がその企業の将来性にどれだけのプレミアム(価値)を払ってもよいと考えているか」という市場の心理・期待値を表します。
PERが高くなる主な要因には以下のようなものがあります。
- 将来の成長期待:「今後、利益が飛躍的に伸びる」と期待される企業や市場はPERが高く評価されます。
- 低金利環境:安全資産(国債など)の利回りが低い局面では、リスク資産である株式への期待利回りが下がるため、許容されるPERが高くなります。
- リスクの低さ・安定性:事業モデルが極めて安定している企業は、安心して買えるためPERが高くなりやすい傾向があります。
4. 【分析手順】「EPSの計算」から「PERの推測」へつなぐ思考プロセス

株価の見通しや将来予測を行うにあたって、絶対に間違えてはならないのが「分析を行う順番」です。
多くの個人投資家は「なんとなく市場が盛り上がりそうだからPERが上がりそうだ」と感触から入りがちです。しかし、再現性の高いファンダメンタルズ分析を行うには、以下の確定的なプロセスを踏む必要があります。
【株価予測の正しく確実な手順】
- ステップ1:EPSを定量的に計算・見積もる(ファクトの積み上げ)
- ステップ2:環境要因からPER(許容倍率)の推移を予測する(環境の分析)
- ステップ3:算出された「EPS」と「予測PER」を掛け合わせて将来株価を算出する
ステップ1:確定データからEPSを計算する
まず最初に行うべきは、「企業の業績予想(またはアナリスト予想の総和)」から計算可能なEPSを割り出すことです。
日経平均株価の場合、日本経済新聞社などが公表している「日経平均の予想EPS」が存在します。これは構成する225銘柄の予想純利益を合計し、指数用に調整したものです。
企業がどれだけの売り上げを上げ、利益を残すかは、過去の決算数値や直近の企業業績の見通しからかなり精度高く「計算」できます。ここを分析の固い土台(ベースライン)とします。
ステップ2:マクロ環境からPERの推移を予測する
土台となるEPSが手に入ったら、次に「その時代の市場環境(金利、インフレ、投資家心理など)において、PERは何倍が適正か?」を考察します。
PERは市場心理や金融政策に左右されるため、単一の数値として固定することはできません。「弱気シナリオなら15倍」「標準シナリオなら17倍」「強気シナリオなら20倍」といった振れ幅をもって推測していきます。
5. インフレ下における「EPS上昇」のメカニズム
ここからは、現在の日本経済および世界経済の最大のテーマである「インフレ(物価上昇)」が、「株価 = PER × EPS」にどのような影響を与えるのかを解き明かしていきます。
インフレは「名目上の売上・利益」を押し上げる
株式投資において極めて重要な概念が、「株価や企業利益は『名目値(Nominal Value)』である」という事実です。
インフレ環境下では、モノやサービスの価値が上がり、企業の販売価格(単価)が上昇します。企業が提供する数量(実質数量)が変化しなかったとしても、製品価格が上がれば、損益計算書(P/L)上の「売上高」および「営業利益・当期純利益」は名目上大きく増加します。
| 項目 | デフレ・低インフレ時 | インフレ時(単価5%上昇) |
| 販売単価 | 100円 | 105円 |
| 販売数量 | 1万個 | 1万個 |
| 売上高 | 100万円 | 105万円(+5%) |
| 当期純利益(仮定) | 10万円 | 11万円(利益率改善も寄与) |
企業の原価や人件費も上昇しますが、適切な価格転嫁(値上げ)を行える企業であれば、利益額(純利益)は物価上昇率以上のスピードで拡大していきます。
日本企業のEPS成長が加速している背景
近年の日本市場において、日経平均構成銘柄のEPSは明確な拡大トレンドを描いています。その要因は以下の3点に集約されます。
- 構造的な値上げカルチャーの定着:デフレ脱却に伴い、日本企業が継続的に価格転嫁を行える環境が整ったこと。
- 名目GDPの拡大:国内市場の「名目での経済規模」が拡大し、企業収益の絶対値が増加していること。
- 自社株買い(発行済株式数の減少):企業改革(PBR1倍割れ改善など)の一環として自社株買いが活発化し、分母である「発行済株式数」が減少し、計算上EPSが底上げされていること。
このように、「インフレに伴う名目利益の増加」と「自社株買いによる株式数の減少」の掛け算によって、日経平均株価のベースとなる「EPS」は着実に上昇しやすい環境が構築されているのです。
6. 日経平均の見通し:今後PERは伸ばせるのか?
EPS(利益)の伸びが見込めることが確認できました。それでは、株価のもう一つの決定要因である「PER(倍率)」は今後伸びていくことができるでしょうか?
ここが日経平均株価がさらなる高値を目指せるかどうかの最大の分岐点となります。
2026年10月2日(金)の日経平均指標データ
- 日経平均株価(終値): 68,309.46 円
- PER(株価収益率): 17.37 倍(加重平均)
- EPS(1株あたり当期純利益): 約 3,932.61 円(算出値:68,309.46円 ÷ 17.37倍)
ポイント
前日(10月1日)のPER 17.55倍近辺から、株価の反落に伴いPERも17.37倍へとわずかに低下しました。予想EPS自体は3,930円台後半と高い水準を底堅く維持しています。
過去の日経平均PERの推移と現状
歴史的に見ると、日経平均株価のPERは時代によって大きく変動してきました。
- バブル期(1989年前後):PER 60倍〜80倍(極端な過熱・バブル)
- アベノミクス以降(2013年〜2020年代前半):PER 12倍〜16倍程度(レンジ推移)
- 近年の平均水準:概ね 14倍〜17倍 近辺が底堅い適正水準(巡航速度)として意識されている
PERが「拡大(拡張)」するための条件
株式市場でPERが切り上がる現象を「マルチプル・エクスパンション(PERの拡張)」と呼びます。日経平均のPERが現在の14〜15倍から17倍、18倍へと伸ばしていけるかどうかは、以下の3つの条件にかかっています。
① ガバナンス改革とROE(自己資本利益率)の向上
東京証券取引所による「資本コストや株価を意識した経営の要請」をきっかけに、日本企業は急速に意識を変革させています。政策保有株式の縮小、事業ポートフォリオの見直し、積極的な株主還元を通じてROEが持続的に向上すれば、海外投資家からの評価が高まり、許容PERは自然と切り上がります。
② 企業価値の「量」から「質」への転換(脱デフレ)
「安売り」でしか生き残れなかったデフレ経済から、「独自の付加価値と価格決定力を持って利益率を高める」インフレ型経済へと移行できれば、日本企業の成長持続性に対する世界的な信頼が高まります。成長の不確実性が下がることは、そのままPERの上昇要因となります。
③ 金利上昇(日銀の金融政策)との兼ね合い
一方で、PERの抑制要因となり得るのが「国内金利の上昇」です。日銀の金融政策正常化に伴い長期金利が上昇すると、理論上は株式の割引率が上がり、PERを押し下げる圧力として働きます。
しかし、「金利が上がる=経済が健全なインフレ状態にある」ことの裏返しでもあります。金利上昇によるPER押し下げ圧力を、インフレによるEPSの成長力(および企業改革によるROE向上効果)が上回ることができれば、PERは高水準を維持・拡大することが可能です。
7. シナリオ別・日経平均株価のシミュレーション
これまでの議論を踏まえ、実際に「株価 = PER × EPS」の式を使って、日経平均株価の将来水準を具体的にシミュレーションしてみましょう。
PER水準別の目標株価一覧表
| シナリオ | 想定EPS | 適用PER | 試算される日経平均株価 | 市場の環境イメージ |
| 保守的シナリオ | 3,750円 | 16.0倍 | 60,000円 | 世界的な景気後退や金利高によるリスクオフ局面 |
| 標準シナリオ | 4,000円 | 17.5倍 | 70,000円 | 過去の平均的倍率。着実な業績成長を織り込む水準 |
| 強気シナリオ | 4,500円 | 18.0倍 | 81,000円 | 脱デフレ完了、日本企業の構造改革が高評価を受ける |
| 超強気シナリオ | 5,000円 | 20.0倍 | 100,000円 | 海外資金の本格流入、米国株並みの期待成長率を付与 |
もし仮に、インフレと企業改革によってEPSがさらに拡大し「EPS = 4,500円」まで成長した場合、PER18倍で「日経平均 = 81,000円」という計算になります。
このように、「株価 = PER × EPS」の方程式を活用すれば、単なる感覚や感情に流されることなく、「どのような条件が揃えば株価がいくらになるのか」を冷静かつ論理的に組み立てることができるのです。
8. まとめ:インフレ時代における株式投資の戦略

本記事では、「株価 = PER × EPS」という根本原則から、今後の日経平均株価の見通しを紐解いてきました。
【本記事のポイントおさらい】
- 株価は「企業の実質的な稼ぐ力(EPS)」と「市場の期待値(PER)」の掛け算で決まる。
- 分析の基本は、決算やデータから「EPS」を計算し、その後に「PER」の推移を予測する順番を守ること。
- インフレ環境下では、価格転嫁と名目経済の拡大により「EPSの上昇(底上げ)」が構造的に起こりやすい。
- 日経平均がさらなる高値を目指すカギは、企業改革やROE向上によって「PERを15〜17倍以上に維持・拡大できるか」にかかっている。
デフレが長く続いた過去の日本市場では、「業績が増えないため、いかに安く買って高く売るか」という短期的な売買が中心でした。
しかし、明確にインフレ局面へシフトした現在の株式市場において、「名目利益(EPS)の増大に伴って株価の基盤が自動的に切り上がっていく」という長期的かつ強力な追い風が存在します。
日々の株価の乱高下に一喜一憂するのではなく、ぜひ「現在のEPSはいくらか?」「このPERは市場のどのような期待を反映しているのか?」という視点を持ち、ファンダメンタルズに基づいた質の高い投資判断に役立ててください。


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